バリアフリー住宅とは?
バリアフリー住宅とは、高齢者や身体障害者、子育て世代などが快適に生活できるように、住宅内外において段差を取り除いた住宅のことを指します。
具体的には、段差のない玄関や廊下、ドア幅が広く車椅子でも通れる設計であることや、トイレや浴室の床が滑りにくい素材で手すりが付いていることが含まれます。
また、防犯面も考慮され、外部からの侵入を防ぐ鍵や、緊急時に安全に避難できるような煙感知器、非常用照明などが備えられていることも大切です。バリアフリー住宅は、誰にとっても快適で安全な生活環境を提供することが目的とされています。
バリアフリー住宅の基準
バリアフリー住宅の基準には、建築物全体に関する基準や、設備に関する基準などがありますが、法律によって定められた基準を満たすことが求められます。また、これらの基準を満たすだけでなく、実際に住む人が快適に生活できるようにさまざまな工夫が必要とされています。住居の設備ごとに基準がありますのでチェックしておきましょう。
玄関・出入り口
- 玄関の段差は開き戸やドアの下枠の部分にある部材「くつずり」と玄関外側の高低差を20㎜以下にし、玄関土間の高低差を5㎜以下にする。
- 出入口の幅は車いすが通れるよう80cm以上である。
出入り口の基準は、車いすやベビーカーなどがスムーズに出入りできるようにすることを目的としています。玄関フロアは滑り止めの処理が施され、照明は明るく調整されていることが好ましいです。
トイレ
- トイレのサイズは長辺130cm、便器前は50cm以上あること。
- 立ち座り用に手すりが必要です。
トイレのドアは幅80cm以上確保し、介助しやすい広さが必要になります。便座横の壁には手すりを設置し、立ち座りがスムーズにできるようにしましょう。また、非常時に備えて緊急ボタンを設置することも推奨されています。
浴室
- 入口の段差は2cm以下で、脱衣所との高低差は12cm以下にする。
- 浴槽から出入りするための手すりを設置する
- 戸建ては浴室で短辺130cm以上の2.0m²以上であること、共同住宅は短辺120cm以上、1.8m²であること。
入口は他と同様に段差を設けず、引き戸やスライドドアを使用して車椅子でも出入りできるようにします。浴槽については、浴槽内への段差がないフラットタイプの物が望ましく、手すりを設置して入浴時の安定性を確保しましょう。
バリアフリーにする方法
業者に頼むメリット
専門知識や経験がある業者に設計や施工を依頼することで、バリアフリー住宅の基準に適した設計や施工ができるため安心できます。また、業者によっては、補助金の手続きを代行してくれる場合があり、手間や時間をかけずに補助金を受け取ることができます。自分で考える必要がないため、手間や時間をかけずにバリアフリー住宅にすることができます。
業者に頼む
バリアフリー住宅を業者に依頼する場合のデメリットには、費用が高くなる場合があることが挙げられます。また、施工期間も業者によって異なり、長期間工事が行われることがあるため生活に支障が出ることもあります。
業者によっては自分の希望に合わない設計を提案される場合があるため、思い通りのバリアフリー住宅にならない可能性もあります。
DIYのメリット
DIYでバリアフリー住宅を作る場合のメリットとして、低コストで実現できます。業者に頼む場合に比べ、施工費用や設計費用を大幅に抑えることができ、自分で設計することで、自分の好みやライフスタイルに合わせた住宅を実現できる点も大きな魅力です。
さらに、DIYによって得た知識や経験が今後の修理やメンテナンスに役立つ可能性があります。自分で施工した家は、愛着がわき、手入れや修理にも熱心に取り組めるため、長期的なメンテナンスにもつながります。
DIYのデメリット
バリアフリー住宅のDIYは、専門的な知識や技術が必要であるため、未経験者にとっては難易度が高い場合があります。また、DIYの道具を持っていない場合は購入するため高額になってしまったり、DIYによる施工ミスやトラブルが発生する可能性も。経験が浅い方は特に注意が必要です。
バリアフリー住宅の事例一覧
バリアフリー住宅にリフォームする場合、業者に頼む場合と自分でDIYする場合の価格をまとめました。
玄関のバリアフリー
DIYではスロープを付けるだけであれば1,200円~、手すりは1万円~、ベンチは3,000円~と簡単にできる物は安価に対応できるようです。ただ、引き戸へのDIYは専門的な知識が必要になるためDIYでは厳しいでしょう。
業者に頼んだ場合は、スロープの設は置約2万〜約4万円(1㎡あたり)、手すりは約2万〜約5万円、ベンチは約1万〜約4万円、引き戸は約32万〜約55万円となっています。
トイレのバリアフリー
DIYでは、床紙の張り替え5,000〜1万円、手すりは3,000円~、洋式トイレへの変更やトイレの拡張はDIYでは難しいため、業者へ頼みましょう。
専門業者に対応依頼した場合、床紙の張り替えは約5万~10万円、手すりの設置は約2万~約3万円、和式トイレから洋式トイレへの変更は約40万~約60万円、トイレの拡張は約20万~約40万円となっています。水回りのDIYは水漏れの原因になって危険なため、おすすめはしません。
お風呂(浴室)のバリアフリー
DIYでは手すりは4,000〜5,000円、スロープを付けられる場合は3,000円~、滑りにくい素材に変更するのは専門的になるため、滑り止めシートやマットで代用する場合は1,500円程度~、暖房やシステムバス、床材の変更、浴室の拡張についてはDIYでは難しいため業者に相談しましょう。
業者に依頼した場合は、手すりは約3万〜5万円、浴室暖房の設置は約10万〜約25万円、システムバスの設置は約70万〜約150万円、段差の解消は約5万〜約15万円、滑りにくい床材に変更は約9万〜約15万円、浴室の拡張は約30万〜約200万円となっています。
高額になりますが、安全性を考えると業者に頼んだほうがいいでしょう。手すりやスロープなどの簡単に取り付けられる物はDIYで対応してもいいかもしれませんね。
洗面所(洗面台)のバリアフリー
DIYでは洗面台周りのバリアフリー化は難しいため業者の費用相場をご紹介します。
業者に頼んだ場合、車いす用洗面台の設置は約12万〜約30万円、洗面所の拡張は約20万〜約50万円、開き戸から引き戸に変更するのは約7万〜約12万円となっています。
リビングやダイニングのバリアフリー
DIYでは床の段差を調整するスロープ、もしくはサイズに合わせた材料費のみのため数千円でできます。
業者に頼んだ場合でも床の張り替え工事は約2万円~です。1か所の金額になっているため、段差になっている箇所が多い住居では値段が上がる可能性が高いでしょう。
台所(キッチン)のバリアフリー
DIYでできるのは手すりの取り付けくらいですが、3,000円~です。ガスや水道があるため、業者に依頼するほうがいいでしょう。
業者に頼む場合は、手すり取り付け費用約3万円~、床材張り替え約5,000円(平方メートルあたり)~、電動式吊戸棚に変更は40~60万円、ガスコンロからIHクッキングヒーターへ変更は30~40万円となっています。
車いすでは高いところの物が取れなくなるため、電動式吊り戸棚はあったらとても便利になります。
バリアフリーの補助金
平成28年4月~令和6年3月までの間にバリアフリーの工事をおこなった場合、必要条件を満たしていて申告をしていれば固定資産税の減額ができます。
新築から10年以上経過していること、床面積が二分の一をバリアフリー住宅にすること、また居住されるのが65歳以上の方で要介護認定や要支援認定を受けていること、障害があることが対象になります。改修工事をおこなった場合は3か月以内に申請しないと失効してしまうため早めに申請しておきましょう。
バリアフリーにDIYするときの注意点
バリアフリー住宅の基準は法律で定められています。DIYする場合でも、法律や基準を守ることが大切です。基準を満たさない場合、保険金が支払われなかったり、事故が起こった際に責任を負うことになる可能性があります。また、設置の仕方や材料の選び方によっては安全性が確保されないこともあります。DIYする前に、安全性を確保するための方法を調べておくことが大切です。
また、設備の選定や設置場所、材料の調達などを計画的に行い、作業を進めていくことが重要です。計画を立てることで、効率的にDIYを行い、失敗やトラブルを防ぐことができます。
一般的に、バリアフリーの補助金は、専門業者による工事費用に対してのみ支給される場合が多いです。つまり、DIYによる改修や設備の購入に対しては補助金が支給されないことがあります。ただし、自治体によっては、DIYによる改修や設備の購入にも一定の補助金を支給する場合がありますので自治体のホームページや相談窓口で詳細を確認しておきましょう。
新築でバリアフリー住宅を立てるときの注意点
設計段階でバリアフリーの基準を確認してもらうことが重要です。床の段差やドアの幅、手すりの位置など、実際に住んでから困ることがないように建築家や設計士に確認しましょう。
また、トイレや浴室などの設備は、シンプルな物のほうがボタンやレバー操作がしやすいです。機能がたくさんあっても使わなくなってしまうことが多いので、単純で明解なデザインの物を選んでください。照明は明るくコントラストのはっきりした色を使用して、階段や段差などがより見やすくなるようにしてもらいましょう。
他にも、玄関の段差は、車いすやベビーカーの移動に支障が出ないよう段差を解消するように設計してもらいましょう。スロープやエレベーターなどを設置することも検討しておくと安心できます。手すりがあればと思っていても人生100年時代、何が起るかわかりませんよ。元気なうちから少しずつ住みやすい家にしておくと、動けなくなってから慌ててやることを減らせるでしょう。